弁護士 古川拓からのメッセージ
新年のごあいさつ
新年明けましておめでとうございます。
昨年は,事務所を新設して夢中で走ってきましたが,みなさまのおかげで何とか新年を迎えられるに至りました。
今年は,腰を据えつつ,研鑽を怠らないようにしながら,みなさまのお役に立てるようがんばってきたいと思います。
とりいそぎごあいさつまで〆
(2009/01/03)
代理人であるということ -弁護士のスタンス-
法律相談を行っていると,
「当事者間でモメているので,弁護士に中立な立場から立ち会ってほしい」
という依頼の申し込みが,ときどきあります。
また,お客様から依頼されて行う交渉事件で,弁護士をつけていない相手方から,
「(弁護士である私に)間に入ってもらっているのだから,こちらにも納得のいく解決をしてほしい」
と言われることがあります。
このようなお言葉は,弁護士に対する市民のみなさまからの信頼から来ているものですので,そういうご認識をいただいている点について,それ自体が非常識であるとは決して考えていません。
しかし,上で挙げたご依頼は,いずれもお受けしかねるものです。
その理由を簡単に言うと,
弁護士は,あくまで依頼者であるお客様の利益をまもる立場から行動する
ということです。
もちろん,お客様の立場に立って冷静に事案を検討し,
「お客様の現在の意思には100%はそぐわないかもしれないけど,全体を見渡して見とおしを立てると,これがよりベターな解決だと思われる」
と判断したときには,お客様のお気持ちとは違った内容や方法を,提案する場合があります。
しかしそれはあくまで提案であって,お客様の意思に反した内容を相手と相談して勝手に決めてくる,などといったことは絶対にしません。
また,相手方に対して,こちらの示した条件が相手にとっても悪くない解決であることについて,理を尽くした説得を惜しまないつもりです。
しかし,私がそれをするのは,説得によって早期に紛争を解決することがお客様の利益にかなうからで,相手方のためではありません。
相手方は,ご自身でお考えになるか,別の弁護士に相談・依頼するなどして自分自身の利益をまもるべきだと考えています。
ちなみに,私としては,「間に入って双方の利益を考えた解決を行う」ことが機能するのは,次のいずれかの場合だけだと考えています。
それは,
①争いごとの当事者双方が,間に入った人やその人の判断に対して全幅の信頼を置いている場合,
②間に入った人が,自分の考えた解決策を双方に対して強制する力を持っている場合,
です。②の典型例は裁判所でしょう。もちろん,常に裁判所が双方の「利益」を考えているとは言えませんが。。
①は,,,,残念ながら,このような人(機関)に出会うことは稀です。もちろん,弁護士だからと言うだけで当然に①に当てはまるなどとは,とても言えません。
やはり人間にとって,どちらの立場にもいい顔をするというのは,何となくうさんくさい,ということになってしまいますしね。。
ちなみに,弁護士には「相手方の協議を受けて賛助し,又はその依頼を承諾した事件」の受任禁止が法律上義務づけられており(弁護士法25条など),原則として当事者双方の代理をすることができません(※)。
ご依頼を受けて,お客様の利益をまもるお仕事をさせていただく以上,この点については厳しくまもっていく必要があると考えています。
※弁護士でない方(士業含む)については,そもそも業として法律事件(交渉事件も含む)の代理・仲裁若しくは和解を行うことが刑事罰を以て禁止されています(弁護士法72条,77条など)。
(2008/12/20)
証人尋問の妙
テレビの裁判もので,証人尋問のシーンはクライマックスの一つです。
そこで,実際の裁判における,証人尋問について取り上げてみようと思います。
まず,誤解を恐れずに言うと,裁判の行方は,およそ7~8割が証人尋問前に提出された証拠(主に文書)によって方向付けられるといいます。
→これは,司法修習(研修のことです)時代,司法研修所の民事裁判教官だった裁判官(※)が言っていたことです。
しかし,やはり単なる文書だけでは決着できないことも多く,証人尋問によって決着がつくことも,当然少なくありません。
そこで,証人尋問を担当する弁護士のスキルが,訴訟の勝ち負けを決めてしまうことが往々にしてあります。
ここで,裁判を,特に証人尋問を何度か傍聴された方であれば,証人尋問のやり方は弁護士によって千差万別であることに気がついた方がおられるかと思います。
では,どのような尋問のやり方が「うまい」のか。これについても弁護士の中で色々な意見があります。
私も,証人尋問について書かれた書籍や他の弁護士の講義などを聞き,かつ日々証人尋問を行いながら研究しています。
その中で,おおまかに言うと次の点が大切なのではないかと思っています。
①証人尋問は,自分の意見を述べたり,証人の意見を聞く場所ではない。
→時々,証人と議論をしてねじ伏せようとする弁護士を見かけますが,大切なのはお互いの「意見」ではなく,証人の体験した事実や認識です。
テレビドラマなどでは長々と自分の「意見」を述べる弁護士がいますが,実際の法廷とは随分異なった印象を受けます。
②証人尋問は,証人に自分が話して欲しい事実のみを話してもらえるのが,一番の理想である。
→証人にはこちら側の欲しい事実のみを述べさせるよう,コントロールしながら尋問することを心がけています。
自分側の証人に対する尋問(「主尋問」と言います)であれば十分打ち合わせをすることが大切です。
では,相手側の証人に対する尋問(「反対尋問」と言います)の場合,その証人をどのようにコントロールするか。
このあたりから,それぞれの弁護士ごとのスキルが異なってくると思います。
③証人尋問は,不測の事態が発生することが多く,事前準備が大切である。
→やはり,人間が人間に質問するのですから,どのような答えが返ってくるかは,やってみないとわからない部分が必ずあります。
その時にモノを言うのは,やはり事前準備。これをしっかりやっておけば,妙な答えが帰ってきても,対応できる幅が大きくなります。
上に挙げたのはあくまで総論的で,具体的な尋問に際しては,質問内容・順序・全体の構成などについて,それこそ寝ずに考え,作り上げることもあります。
もちろん,今まで全ての証人尋問で成功したわけではありませんし,振り返って「あれは失敗だった」と思うものもあります。
しかし,証人尋問についての方法論(単に「気合い」などといった意味ではなく)を意識し始めてからは,その違いは明白になりました。
少し大げさに言えば,弁護士にとっての証人尋問は,訴訟を勝利に導くという「戦略」の上で,決戦場での「戦術」が要求される場であると考えています。
一発勝負であることもあって,非常にエキサイティングな場面であるのみならず,そこには明らかに戦術「論」が存在します。
胸のすくような証人尋問ができた時は,何日か経ってからも思い出し,悦に入っていることもあります。
お客様の苦境を突破するスキルを,日々磨いていきたいと思います。
※一般に,裁判官にとっての司法研修所教官は「出世コース」であると言われ,優秀な方が多いです。
(2008/12/19)
この事件,勝てますか?
事件を受任するときに,しばしば,
「勝てますか?」
「(相手からお金を)とれますか?」
と質問を受けることがあります。これは難しい事件・微妙な事件であればあるほど多いように思います。
お客様としては,せっかくお金を支払って依頼する以上,成功することを約束してほしいとお考えなのは当然です。
私としても,ここで力強く,
「大丈夫です!任せておいて下さい!」
と宣言したいのはやまやまです。
しかし,現実はなかなかそのようにはいきません。
どんなに容易に解決できそうに見える事件でも,一旦ふたを開けてみるまでは何があるかわからないからです。
お客様自身にも想像できなかった事実や証拠の出現,相手方の行動などによって事件の進行は異なってきます。
たとえ過去に発生したできごとであっても,これからの誰かの言動によって,当初の方針の変更を余儀なくされる場合も少なくありません。
そして,一番大きいのは訴訟になった場合です。
裁判官も神様でない以上,法廷内に持ち込まれた証拠にたよって判断をする以上,真実とは全く異なる事実を認定してしまう可能性があります。
もちろん,証拠を用いて事実を構築し,お客様の主張を裁判所にアピールすることは,弁護士の腕の見せどころです。
しかし,手段を尽くしたとしても既にある証拠の重みの前に破れたり,相手との駆け引きやふとした証言によって勝敗の帰趨が左右されたりすることも少なくありません。
やはり訴訟も人間同士で行う以上,絶対はありえないのです。
このように,弁護士はいわば「成功を請け負う」ことはできません。
そこで,弁護士が見とおしを語るときには,どうしても,
「お話を聞いた限りでは,勝てると思う」
だとか,
「まるきり期待ができないわけでもない」
などといった,奥歯に物が挟まったような説明しかできなくなってしまいます。
(弁護士に限らず)他の方から安易な結論,特に楽観論を聞いて来られた場合,説明を聞いて不満を感じる方もおられるかと思います。
しかし,このようなある種「煮え切らない」説明をしているからといって,やる気がないわけではありません。
むしろ,難しい事件・微妙な事件であればあるほど,どうすればお客様の期待に添えるか,解決に迫れるかを,「煮え切らない」説明をしている最中も,考え続けています。
私は,単に臆病であることと,人間世界の不可知性に対して謙虚であることは異なる,と思っています。
弁護士は,言葉に責任を持つ類の職業である以上,いい加減な事を申し上げてお客様に過度に楽観的な期待を持たせるわけにはいきません。
仮に安易に楽観論をふりまいて悪い結果が出た場合,それを当てにしていたお客様に二次被害を与えることになりかねません。
争いである以上,どうしても不確定要素が残ってしまいます。
大切なのは,その上で,その不確定要素とは何であるか,ご自身がどういう尺度(基準)で具体的進行方針を選んだのかを,しっかりご確認いただくことだと思います。
そのことが,(本当は考えたくもないですが)争いに利あらずして敗れた場合でも,お客様ご自身のリスクを最小限化し,あるいは心持ちをしっかりしていただく事につながるのだと思います。
。。こう書いていくると,
「この弁護士は負けたときのことばかり考えているのでは」
というご印象を持たれるかもしれません。
しかし,私としては,勝利にどん欲であればあるほど,上に書いたことは大切だと思っています。
そして,少し大仰な言い方をすれば「人事を尽くして天命を待つ」。
事実を丹念に拾って構築し,立証を重ねるという王道を実直に歩んでいくことこそが,お客様の期待する結果を導く,最も近道であると考えています。
そのことと,お客様のお気持ちとがしっかり合わさったときには,一番良い結果(「勝てた」)が出るでしょう。
お客様の人生の大切なときにおける,よき水先案内人でありたいと願っています。
(2008/12/06)
時間が空いてしまいましたが。。。
久しぶりの書き込みです。
このほど,高校時代からの友人でもあり,同じ事務所の同僚でもあった友人の,アメリカでの司法試験合格の知らせが届きました。
彼は,昨年の夏に,アメリカに渡ってロースクールに入り,今年司法試験を受けていたのですが,予想どおりとは言え,無事に合格できたことは,本当に素晴らしいことだと思っています。
単に留学,と言うだけでなく,語学と法律の壁をたった一年で突破したということに,よくぞ!という思いが正直にします。
ぜひ,これ以降も,培った語学と法律の知識(日本に帰ってからは国際法分野ということになるのでしょう)を武器にして,国際弁護士として縦横に活躍してほしいものです。
ところで私は,と言えば,彼のようなレベルまではともかく,何か一つでも外国語を使えるようになれたら。。と思いつつ,果たせないでいます。
恥ずかしい話,何年か前にイタリアに旅行した際,お店でイタリア人と英語で話をしていて,
「Can You Speak English?」
と馬鹿にされたことがあります。もちろんそのイタリア人は一切日本語を知らず,私はその会話で英語しか使っていなかった(はず)なのに,です。。
ある友達が以前,
「やる気のあるヤツは手段を考え,やる気のないヤツは言い訳を考える」
と言っていたことを思い出しましたが,今更ながら心に刺さりますね。。(苦笑)
ともあれ,彼の一層の活躍を願いつつ,私も自身の活動を,地道に取り組んでいきたいと思います。
(2008/11/29)
「これって請求できるんですか?」 -法律相談TV番組の功罪-
ひと頃よりは収まった感がありますが,TVでの法律相談番組に人気があるといいます。
弁護士がたくさん出て来て,事例が紹介され,
「○○は△△に請求できる(できない)!」
などといったYES・NO型の答えが提示される,というスタイルが一般的でしょうか。
こういった番組は,とっつきにくいイメージのある法律の問題を身近に親しみやすく感じることができるので,良い側面があることは間違いないでしょう。
しかし,TV番組は「わかりやすさ」や「おもしろさ」を大事にするため,物事を単純化しすぎて,実際の争いごとからかけ離れた描き方になってしまう傾向があるように思います。
こういった番組の影響でしょうか,法律相談を受けていると,
「これって相手に請求できるんですか?」
というご質問を受けることがよくあります。
このようにご質問いただく場合,お客様としては,現実に権利が実現する(例えばお金が手元に入る)ことをイメージして質問しておられることがほとんどです。
その場合,このご質問には,以下の3つの点を検討した上で回答さしあげる必要があります。
①相手方の態度はどうか,
②訴訟で争った場合,裁判所の判断はどうなると予想されるか,
③①又は②をクリアしたとして,実現可能か,
という視点です。
つまり,一般的に相手に対して権利があるかどうかも大事ですが,現実の解決のためには実現するかどうかの視点がとても大事だと思います。
以下,順番に説明したいと思います。
①相手方の態度はどうか
お客様の相手方が,お客様の求めることを自分で認めている場合には,実現する可能性は高いと言えます。
この場合,その要求が法律上認められるかどうかは関係ありません(もちろん,要求自体が違法である場合は別ですが)。
相手が認めているのだから,あとは実行してもらうだけ,ということになります。
ただ,その要求が法律上必ずしも認められない場合もあります(例えば過大な慰謝料など)。
その場合,相手方が途中で気が変わってしまうと話がふり出しに戻ってしまうので,できれば文書の形にして,相手方から署名と捺印をもらっておくと良いでしょう。
どのような文書にすればいいかについては,あらかじめ弁護士にご相談されることをお勧めします。
文書の内容に問題があると,後に相手方の気が変わって争いになるなどした際,裁判所から認めてもらえないおそれがあるからです。
→これについては,また別の機会に説明する予定です。
②裁判所の判断はどうなるか
相手方が,お客様の要求を拒絶した場合,それがどんなに不当な拒絶であっても,無理矢理取りたてるというわけにはいきません。
そんなことをすれば,場合によっては,恐喝罪や強要罪などに問われてしまいかねません。
そこで,強制的にでも権利を行使できるよう,訴訟を起こして裁判所に判断を求める必要があります。
その場合,裁判所は,法律や過去に出された裁判例(「判例(はんれい)」と言う場合もあります)に基づいて判断をします。
従って,弁護士としては,ご相談を伺い,お客様の直面している具体的な状況を整理し,法律や裁判例に当てはめて予想を立てることになります。
③実現可能かどうか
①や②をクリアした後,最後のハードルがこれです。
たとえ権利があっても,相手にお金がない場合や逃げられてしまった場合には,せっかく訴訟で勝っても,単なる紙切れにすぎません。
そこで,仮に勝利した場合(相手がこちらの要求に応じる場合)に,こちらの要求が実現するかどうかについても,十分な検討が必要です。
もちろん,単純に正面から交渉したり争ったりするだけでは,権利を実現するためには不十分な場合があります。
そういう場合には,債権の回収行為(差押えなど)を行う必要がある場合があります。
また,債権の保全(仮差押えなど)を含め,あらかじめ権利実現に向けての下準備を行う場合もあります。
いずれにせよ,「請求できる」という言葉には,上で説明したとおり色々な角度から検討する必要があり,なかなかTV番組のようにはいかないのが現実です。
従って,その問題がお客様にとって大切であればあるほど,一度お気軽に(できれば早い段階で),弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
(2008/10/24)
事実解明や損害賠償請求に向けて(2) -証拠保全手続-
(1)では,交通事故などの際に,事実解明や損害賠償を行う上で,刑事記録を活用する場合について説明しました。
今回は,被害者が自ら証拠を集める手段の一つである「証拠保全手続」について説明したいと思います。
相手方に対して,損害賠償などの請求を行う場合,裁判所でこれを認めてもらうためには,多くの場合証拠が必要となります。
ところが証拠は,原則として,裁判所が集めてくれるわけではなく,自分で集めてくることになっています。
では,証拠資料が相手方の手元にある場合はどうすればいいのでしょうか。
実は,このような状況は決して珍しいことではありません。
例えば,医療事故や介護事故などのように病院や介護施設で事故が起こった場合,カルテなどの大切な証拠資料は,ほぼ全てが施設内にあります。
また,労災事故や過労死・過労自殺などが起こった場合も,事故の実態や労働者の働き方の実態を証明する証拠資料の多くは,職場にあるでしょう。
そのような場合,被害者としては,
①相手方の手元にどのような証拠があるかわからない,
②そもそも相手に対して賠償賠償を求めることができるのかどうかすらわからない,
という状態にあります。また,
③相手方が証拠を隠したり,ひどい場合は捨てたり書き換えたりして破棄してしまうかもしれない,
危険すらあります。
そういった場合,ただやみくもに相手に対して賠償を求める交渉を申し入れてみたり,いきなり裁判を起こすことは,
①こちらの主張が認められるかどうかの見とおしがたたず,紛争が泥沼化するおそれがあること,
②相手方に証拠を隠したり破棄する時間を与え,大切な証拠が日の目を見ないおそれがあること,
などから,おすすめできません。
「内容証明」について書いたことと同じように,不用意な相手方との接触によって,元も子もない状態になってしまうことすらあります。
そこで,利用を検討するのが,「証拠保全手続」です。
裁判所に申し立てて決定をもらい,ある日突然裁判官と共に現場を訪れて証拠を出してもらい,その場でコピーするなどして証拠を確保します。
警察などの捜査機関が捜索や差押えをするのと少し似た手続と言えるかもしれません。
証拠を確保することで,相手方がその日以降に証拠を隠したり書き換えたりすることを防ぐことができます。
また,その段階で証拠を見ることができ,実際にこちらが相手へ請求手続を行うかどうかを検討する材料を得ることもできます。
この証拠保全手続は,証拠が相手方の処に偏って集中している事案では,とりわけその必要性が高い場合が多いと言えるでしょう。
私としても,事案の性質と状況に応じて有効に活用すべき手段だと考えています。
具体的手続の進め方や方法については弁護士にご相談いただければ幸いです。
(2008/10/09)
消費者被害(1) クーリングオフ期間の開始時期について
今日は,クーリングオフ制度のお話しをしたいと思います。
まず最初に,簡単に前提知識を入れましょう。
「クーリングオフ」制度とは,簡単に言うと,一旦申し込んだ契約の撤回や解除ができる制度で,「頭を冷やす」という意味からこの名前がついています。
しかも違約金などの発生がないという消費者側に有利な制度なので,あとで「やっぱり買うのを止めておこう」という時,とても便利です。
制度の概要については,経済産業省の近畿経済産業局HPなどで説明しているのでご参照いただければと思います。
ここでは,
「契約(申込)してから,8日間が経ってしまっているんだけど。。。」
というご相談があった場合でも,まだクーリングオフできる場合があるということについてご説明したいと思います。
すなわち,クーリングオフ期間は,業者が消費者に「法定書面」を交付してから進行し始めます。
そして,この「法定書面」は,経済産業省などの省令で記載すべき事項が厳格に決められているのです。
具体的には,
「会社の名前だけでなく代表者名が必要」
「契約締結を担当した担当者の氏名が必要」
「商品の種類や数量が『一式』『1セット』などではダメ」
「クーリングオフ制度の説明については,赤枠の中に赤字で書き,文字の大きさが8ポイント以上であること」
などなど,業者は詳細な書面を作成する必要があるのです。
ということは,業者から法定書面の要件を満たさないいい加減な書面しかもらっていない場合,クーリングオフ期間がそもそも進行を開始していない可能性があります。
その場合,契約(申込)した日からクーリングオフ期間とされる日数が経過していても,そもそも期間のカウントが始まっていない以上クーリングオフが可能となります。
このように,消費者関係の法律は,業者に厳しい要件を課すことによって,業者が消費者を食い物にすることを防いでいます。
また,仮にクーリングオフ期間が終了していても,消費者契約法による取消が可能な場合もあります。
したがって,被害に遭ってしまったとしても簡単にはあきらめず,弁護士に相談するなどして挽回していきましょう。
※もっとも,契約の対象となった商品の種類によっては,そもそもクーリングオフができない場合があります。(例:不動産売買契約を業者の事務所で締結した場合など )
ただ,この場合においても,消費者契約法に基づく取消などが可能な場合もありますので,あきらめずに弁護士にご相談されることをお勧めします。
→これらのことについては,また後日お話ししたいと思います。
(2008/10/03)
「とりあえず内容証明」にご注意(2)
(1)では,「内容証明」郵便を出す,時と場合についてのお話をしました。
今回は,「内容証明」を出すときに注意すべき「内容」について説明したいと思います。
※以下「内容証明」とは,「内容証明・配達証明付通知書」の略称を意味します((1)でも同様)。
らくさい法律事務所で「内容証明」を作成する場合,
「そもそも必要な場合でなければ出さない」
「最低限必要なこと以外は書かない」
ことをモットーにしています。その理由について,以下順番に説明したいと思います。
1.「内容証明」は高い
まず,単純に言えることは,内容証明郵便は費用が高いということです。
これは弁護士に支払う費用ではなく,郵便局に支払う費用のことです。
通常の郵便料金の外に,内容証明料,配達証明料,書留料などが加算されていき,ちょっとした文書でもすぐに2千円以上かかってしまいます。
しかも,内容証明料は出す手紙の枚数に比例するので,手紙が長くなればなるほど料金は上がっていきます。
もちろん,必要なのであればやむを得ない出費だといえますが,本当に必要なのでしょうか。
従って,「なぜ内容証明を出すのか?」ということについて,これを出す前にその意味や効果をしっかり踏まえるべきだと思います。
2.本当に「内容証明」は必要? 証明する必要がない場合は原則不要
次に,内容証明を出す必要があるかどうかを,一度検討してから出すべきだと考えています。
結論から言うと,内容証明を出す意味は,次の2点に尽きます。
①(手紙を出す)相手方に伝えた内容を,後で証明する必要がある場合
②その手紙が相手方に届いたことを,後で証明する必要がある場合
逆に言うと,①②でない場合は,「内容証明」を出す必要はありません。
具体的な例をいくつか挙げて説明します。
(1)家賃を支払ってくれない賃借人に出て行ってもらうための解除手続 → 必要
大家さんは賃借人と賃貸借契約を結んで家を貸しています。
この場合,仮に賃借人が家賃を支払ってくれない場合,賃借人に当然に出て行ってもらえるわけではありません。
賃借人に「●●日以内に滞納賃料を支払ってくれないのなら,契約を解除します」と通知して契約を解除しなければいけません。
これをしないで賃借人を訴えても,裁判所は「まだ契約を解除していないので,解除してから来て下さい」と言うでしょう。
そこで,賃借人から「解除だなんて言われたことがない」「そんな通知は受けていない」などという逃げ口上を言われないために,
①賃借人に「支払わないと解除する」という内容の意思を表示したこと(内容証明)
②それが賃借人に届いたこと(配達証明)
を証明する必要があるのです。
従って,この場合,「内容証明」を出すことが必要であると言えるでしょう。
(2)交通事故で相手から被害を受け,損害金を請求する場合 → 原則不要
このような場合,相手方に通知を行うことが必要であるようにも思えます。
しかし,結論から言うと,特に「内容証明」を送る必要はないと考えらえます。
交通事故で受けた損害を賠償してもらう場合,法律上あらかじめ相手に通知する必要はありません。
後になって,「●●日に相手に通知した」とか「相手がその通知を受けた」ことを証明する必要はないのが通常です。
従って,普通郵便で相手に通知を送り,その返答を待って交渉を始めるというやり方で差し支えないと思います。
<※例外その1>
損害賠償請求権が消滅時効にかかる可能性がある場合には,時効中断のための催告をする必要があります。
その場合は,「相手に通知したこと」「それが相手に届いたこと」を証明する必要があり,「内容証明」が必要な場合と言えるでしょう。
<※例外その2>
お客様のお気持ちとして,相手に礼を尽くしたいと考える場合などです。
「内容証明」を送ること自体には,「2.」で説明した以上に,特に法的な意味はありません。
ただ,世間一般には,相手に「正式に」通知するというイメージがあることは否めないため,お客様のお気持ちに添って,いわば「ご挨拶」代わりとして送る場合もあるかと思います。
ただし,その場合(1)で書いたように,相手に逃げられる恐れがあるかどうかを考慮する必要があるでしょう。
(3)離婚相手に弁護士が受任したことを知らせる場合 → 原則不要
一般に,話し合いを始めたり,調停を起こしたりしたことを,後で証明する必要はありません。
そこで,このような場合の相手方への通知方法として「内容証明」を用いる必要はないと思います。
ただし,
①お客様が直接相手方と接触すること自体したくない場合で,
②相手方が弁護士を飛び越えて無理矢理連絡を取ろうとする可能性がある場合,
には,「内容証明」を送付しておく必要があるかと思います。
将来,「こちらが弁護士を通して話をして欲しいと連絡したのに,相手方は本人と無理矢理連絡を取ろうとした」ことを証明し,相手方の悪質さやこちらの精神的苦痛を証明する必要が生じる場合があります。
このような場合は,「内容証明」を送付しておくと良いでしょう。
また,前項で書いた<※例外その2>の場合も,「内容証明」を用いても良い場合かと思います。
3.そんなこと書いてしまって,後で大丈夫? デメリットがある場合は有害
次に,「最低限必要なこと以外は書かない」という点について説明します(これは,相手方に出す文書全てについて言えます)。
一言で言ってしまうと,「内容証明は自分自身も縛る」ということです。
「内容証明」は,相手との法的なやりとりを開始する序盤に出されることが通常です。
しかし,そこでこちらが書いたことは有利・不利を問わず全て証拠として残るのです。
とすると,後に新しい事実が判明して方針転換の必要が出たとしても(これはしばしば起こることです),一旦書いてしまったことに反する言動をとることがとても難しくなってしまいかねません。
したがって,必要なこと以外の事実などを長々と記載することで,自分自身の将来の言動を縛ってしまう危険性があることを十分に認識すべきだと思います。
実際に私自身,長々と書かれた「内容証明」を不用意に送りつけてきた相手方が,争いの終盤で自己矛盾して敗訴した事例を何件も目にしています。
不必要な内容証明の具体例は,事実経緯についての自分側の認識を長々と述べる「内容証明」です。
相手方が各事実について違う認識を持っていたり争ってくる場合には何の意味もありません。
話し合いの前提としてこちらの認識を相手に伝えるためであれば,口頭か普通郵便で十分だと思います(相手が話し合いに応じる気があるのなら,そもそも形式にはこだわらないはず)。
逆に,それ以降こちら側がその内容に反する言動をとることが難しくなる危険がでてしまい,方針転換できなくなってしまいかねません。
嘘をつくべきではありませんが,相手の言動に応じてこちらの物言いを考えるのは争いごとの基本だと思います。
不用意な「最初の一手」によって,本当なら詰むはずの詰め将棋が詰まなかった,という事態はできる限り避けたいものです。
また,こちらの考えや出方を相手に不必要に知らせてしまう,という点でも,感心できないやり方だと思います。
もちろん,詳細な「内容証明」が必要な場合があることを否定はしません。
しかし,その場合,とても慎重に言葉を選ぶ必要があると考えています。
※上記はあくまでも一般論ですので,常に例外がありうることについてご留意下さい。
具体的にお客様ご自身の事件において「内容証明」が必要になるかについては,弁護士にご相談いただくと良いでしょう。
らくさい法律事務所では,
①お客様の事件において「内容証明」が必要かどうかの検討と,
②お客様の気持ちに添った事件進行を心がける視点から,
「内容証明」を出すかどうかをご相談させていただきたいと思います。
(2008/09/25)
事実解明や損害賠償請求に向けて(1) 刑事記録の活用
交通事故をはじめとする様々な事故などで,被害に遭われたお客様の依頼を受け,事実解明や賠償請求を行っています。
多くの場合,被害に遭われた方の手元には,何が起こったかの事実を解明する資料や証拠があまりないことがほとんどです。
そこで,ご依頼を受けた後,まずはそういった資料や証拠を集めることから仕事がはじまります。
その際,警察などの捜査機関が捜査を行った事件に関しては,彼らが集めた捜査資料や記録を手がかりにすることがあります。
もちろん,一般的に言うと,捜査機関の記録については,例えば警察に直接交渉しても「捜査の秘密」を理由に拒否されてしまいます。
しかし,刑事事件として捜査を行った記録で,検察官に送致(「送検」といいます)されたものについては,被害者の方であれば,
①起訴(※1 後述)されなかった事件
→実況見分調書のみ
②起訴された事件
→①に加え,証拠として裁判所に提出された記録や公判(刑事裁判)での証言記録など
について,検察庁や裁判所に請求して,ご覧になったりコピーしたりすることが可能になります(「閲覧・謄写」といいます)。
この中で,特に②で大きいのは,加害者を含めた関係者の供述調書を見ることが可能になる点です。
事件の事実を解明していく上で,客観的な証拠も大事ですが,関係者が当時どのように考え行動していたかについては,やはり本人の話を聞くことが一番です。
しかし,多くの場合,被害者が直接加害者に対して事実関係を問いただす機会はほとんどありません。
また,仮にあったとしても,加害者は自分に都合の悪いことを正直に話さない,というのが残念ながら多くの場合の現実です。
しかし,警察などの捜査機関は,強大な国家権力を背景に捜査を進めます。
その中で,事件が発生して間もない時期に,加害者など関係者の生々しい声を調書に記録していることが多く,その調書を見ることは,被害者の方ご自身が事実を知る上で非常に役に立ちます。
例えば,私が取り組んでいる西武鉄道事件においても,事実を証明していく上で刑事記録がとても参考になりました。
西武グループの総帥であった堤義明氏ほか関係者の膨大な量の供述調書を取り寄せ,彼らの長年の違法な行為がどのようにしてなされ,事件の発生に至ったのかについて分析した上で,立証活動を行いました。
その結果,裁判所も,彼らの違法行為を詳細に認定した上で,民事上の賠償責任を認めるに至ったのです(※2 後述)。
このように,様々な事件の被害者の方にとって,刑事記録をどこまで見ることができるかは,とても大きな問題だと言えるでしょう。
先ほどもご説明したように,①事件が起訴されていない場合は客観的な事故状況を記載した実況見分調書くらいしか見ることができなくなるので,②起訴がされた場合と大きな違いが出てくるのです。
このような角度から見てくると,被害者の方が加害者に対する刑事裁判を望まれるのは,単に加害者を罰して欲しいからだけではなく,より事実が明らかになる
ために必要だからである,ということが,わかっていただけるかと思います。
私が様々な事件に関係して実感しているのは,多くの被害者の方が,
「何が起こったのか」
「なぜこういうことになってしまったのか」
という事実の解明を強く望んでおられるということです。
それは,事件で被った心の傷から立ち直っていく過程において欠かせないといっても過言でない大切なことだと思っています。
そこで,様々な方法を用いて,事実解明に向けた事件活動を行っています。
次回は,被害者の方側から直接裁判所に働きかけて行う証拠収集方法についてご説明したいと思います。
※1 検察官が,犯罪を犯したと考える人を裁判所に訴えることで,これによって刑事裁判が始まります。
※2 その後,被告である堤氏や西武グループ各社が判決を不服として控訴したことで,東京高裁に審理の場が移っています。
(2008/09/24)

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