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弁護士 古川拓からのメッセージ

支払督促のメリット・デメリット -「管轄」に注意!-

よくホームページなどで紹介されている手続きに,「支払督促」があります。

よくある説明では,

(1)内容証明付き通知書と違い,相手方が放っておくと裁判所の判決と同じ効果がある,

(2)訴訟よりは簡単な手続きだし,相手が驚いて払ってくる可能性が高い,

(3)相手方から争われない限り,印紙代が半額で済む,

などと書いてあって,ずいぶん便利な制度であるように説明されています。

 

しかし,この制度を利用するかどうかを決める前に,以下の3つの点についてしっかり考える必要があります。

 

1.相手が不服であれば1枚の紙で自動的に訴訟に移行すること

支払督促が来た場合,同封されている異議申し立ての用紙に名前などを書き込んで返送さえすれば,支払督促は自動的に訴訟に移行します。

訴訟に移行した段階で,裁判所から印紙代についても残りの半額を納めるように言われます。

しかし,逆の立場で考えてみて下さい。あなたの相手は,話し合いをしてもお金を払ってくれなかった人です。

そんな人が,支払督促が来たからと言って,一切の異議(言いがかりも含め)も出さずに,大人しく支払ってくれるでしょうか。

 

2.支払督促から訴訟になると,相手の住所地で裁判(訴訟)することになること

支払督促に対して相手から異議が出されると,相手の住所地に近い裁判所で訴訟が始まります。

つまり,相手方の近所に出向いて訴訟をすることになります。もちろん,あなたも相手方も同じ都道府県に住んでいるなどで,いずれにせよ同じ裁判所である場合には大差ないでしょう。

しかし,はじめから訴訟という手段をとるのであれば,裁判所は債権者であるあなたの住所に近い裁判所になります

これは,日本の民法で「持参債務」原則(お金は相手のところに出向いて支払うべき)が採られていることによりますが,支払督促という手段を使うことは,このメリットを自ら放棄することを意味します

相手が遠隔地にいる場合は,よくよく考えて見る必要があると言えるでしょう。

 

3.相手に逃げる時間を与えてしまう可能性があること

これは,「とりあえず内容証明にご注意」でも触れているので詳細はそちらに譲りますが,不用意にこちらの態度を相手に知らせることで,相手に逃げられないかどうかを考えるべきだということです。

不用意に支払督促を送る前に,債権の保全の必要性があるかどうかを検討する必要があると言えるでしょう。

 

このように書いてくるとおわかりかと思いますが,支払督促が有効な場合は極めて限られています。

もちろん,支払督促が有効であるケースがあることは否定しません。しかし,上の観点から,その有効性を検討する必要があると考えています。 

 

(2009/02/20)

ニュースを見て思うこと(2) 過労自死認容判決

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090203ddm041040020000c.html
損賠訴訟:「過労でうつ自殺」認定 農協に1億円賠償命令--北海道・釧路地裁支部
(毎日新聞 2009年2月3日 東京朝刊)

過労自死の判決ニュースです。「派遣切り」に代表される首切りが横行する一方で,労働者の心身の健康に対する安全を配慮しない雇い主がいることについて,非常な怒りを感じます。

以前,某派遣会社の社長が「過労死は自己責任」という暴言を吐いていたことが問題となりましたが,このような時代だからこそ,働く人の命や健康をまもる活動が,とても大事になってきていると感じます。

(2009/02/03)

情熱の大肯定

ビデオレンタルで,映画を借りてきて観ました。

私はいわゆる「青春モノ」が好きで,一般的には「ハズレ」といわれそうな作品でも,わりと感動をもって観たりしています。

今回借りて観たのは「うた魂(たま)」

「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」と同じ「学園青春コメディ」とでもいうジャンルです。

私が知る限りメジャーにはなっていないようなので一般受けはしなかったのでしょうが,コーラスや合唱が結構好きだったこともあり,気持ちよく観ることができました。

夏帆演じる主人公の自意識過剰・妄想ぶりが,自分の中学・高校生だったころを思い出させ,「あぁ,自分もこんな風に日々妄想に耽っていたなぁ」と恥ずかしくも微笑ましかったのですが,一番印象に残ったのは,ゴリ演じるヤンキー番長が言う,この言葉でした。

 

「必死になってる顔に疑問を持つようなヤツは,一生ダセェまんまだ!」

 

そうです。私が「青春モノ」が好きなのはこれだからです。「情熱の大肯定」とでもいうべき,この堂々さ。

もちろん,必死になりさえすればいい,ということではありません。必死にならないとダメ,とも思いません。

しかし,(特に若者が)ひたむきになれること,ひたむきになること,それ自体をまずは賞賛したいと思うのです。

仕事でも何でも,情熱をもって取り組むことで見えてくる,そういうものが確かにあると思います。

 

弁護士の仕事をしていると,情熱を持つことがとても大切だと実感することがしばしばあります。

人同士の事件はもちろん,会社の事件であろうと,弁護士の仕事は人と人とのトラブルを整理し解決するものです。

そして,いくら法律の問題を扱うといっても,人間社会の問題は最後は心と気持ちの問題であることがとても多いです。

人のことを想う熱い思い,不正を憎む正義感,思いを叶える事に向けたひたむきさなどが,状況を好転させていくことが少なくありません。

もちろん,私自身の情熱は,中学生や高校生とはまた異なった形での表し方になっているでしょう。

しかし,根っこのところでは同じだと感じ,シンパシーを感じているのです。

 

コメディも交えて軽快に,しかしハートはあくまで熱く,そんな「青春モノ」を共感しながら観ています。

(2009/01/31)

ニュースを見て思うこと(1)

更新から遠ざかってしまっており,すみません。

 

フランスで100万人規模のゼネストが起こっているようです。

「仏で100万人ゼネスト、大統領の危機対策に抗議 一部は機動隊と衝突」(1月30日 AFP)

http://www.afpbb.com/article/economy/2565942/3738075

 

昨今の派遣切りの状況などから考えれば,日本でもこのような動きがあってもおかしくないように思うのですが,なかなかそうはいかないようです。

印象的なのは,こういった働く人たちの動きを,世間の人たちが指示していることです。

日本ではともすれば「下見て暮らせ」的発想から,声を上げた人たちに対する風当たりがかえってきつくなってしまう風潮があるように思います。

立場の違いはともかく,声を上げること自体に対する理解(共感でなくても)を持つことが大切だと思います。

(2009/01/30)

新年のごあいさつ

新年明けましておめでとうございます。

昨年は,事務所を新設して夢中で走ってきましたが,みなさまのおかげで何とか新年を迎えられるに至りました。

今年は,腰を据えつつ,研鑽を怠らないようにしながら,みなさまのお役に立てるようがんばってきたいと思います。

とりいそぎごあいさつまで〆

(2009/01/03)

代理人であるということ -弁護士のスタンス-

法律相談を行っていると,

「当事者間でモメているので,弁護士に中立な立場から立ち会ってほしい」

という依頼の申し込みが,ときどきあります。

また,お客様から依頼されて行う交渉事件で,弁護士をつけていない相手方から,

「(弁護士である私に)間に入ってもらっているのだから,こちらにも納得のいく解決をしてほしい」

と言われることがあります。

このようなお言葉は,弁護士に対する市民のみなさまからの信頼から来ているものですので,そういうご認識をいただいている点について,それ自体が非常識であるとは決して考えていません。

しかし,上で挙げたご依頼は,いずれもお受けしかねるものです。

その理由を簡単に言うと,

弁護士は,あくまで依頼者であるお客様の利益をまもる立場から行動する

ということです。

もちろん,お客様の立場に立って冷静に事案を検討し,

「お客様の現在の意思には100%はそぐわないかもしれないけど,全体を見渡して見とおしを立てると,これがよりベターな解決だと思われる」

と判断したときには,お客様のお気持ちとは違った内容や方法を,提案する場合があります。

しかしそれはあくまで提案であって,お客様の意思に反した内容を相手と相談して勝手に決めてくる,などといったことは絶対にしません。

また,相手方に対して,こちらの示した条件が相手にとっても悪くない解決であることについて,理を尽くした説得を惜しまないつもりです。

しかし,私がそれをするのは,説得によって早期に紛争を解決することがお客様の利益にかなうからで,相手方のためではありません。

相手方は,ご自身でお考えになるか,別の弁護士に相談・依頼するなどして自分自身の利益をまもるべきだと考えています。

ちなみに,私としては,「間に入って双方の利益を考えた解決を行う」ことが機能するのは,次のいずれかの場合だけだと考えています。

それは,

①争いごとの当事者双方が,間に入った人やその人の判断に対して全幅の信頼を置いている場合,

②間に入った人が,自分の考えた解決策を双方に対して強制する力を持っている場合,

です。②の典型例は裁判所でしょう。もちろん,常に裁判所が双方の「利益」を考えているとは言えませんが。。

①は,,,,残念ながら,このような人(機関)に出会うことは稀です。もちろん,弁護士だからと言うだけで当然に①に当てはまるなどとは,とても言えません。

やはり人間にとって,どちらの立場にもいい顔をするというのは,何となくうさんくさい,ということになってしまいますしね。。

ちなみに,弁護士には「相手方の協議を受けて賛助し,又はその依頼を承諾した事件」の受任禁止が法律上義務づけられており(弁護士法25条など),原則として当事者双方の代理をすることができません(※)。

ご依頼を受けて,お客様の利益をまもるお仕事をさせていただく以上,この点については厳しくまもっていく必要があると考えています。

 

 

弁護士でない方(士業含む)については,そもそも業として法律事件(交渉事件も含む)の代理・仲裁若しくは和解を行うことが刑事罰を以て禁止されています(弁護士法72条,77条など)。

(2008/12/20)

証人尋問の妙

テレビの裁判もので,証人尋問のシーンはクライマックスの一つです。

そこで,実際の裁判における,証人尋問について取り上げてみようと思います。

 

まず,誤解を恐れずに言うと,裁判の行方は,およそ7~8割が証人尋問前に提出された証拠(主に文書)によって方向付けられるといいます。

→これは,司法修習(研修のことです)時代,司法研修所の民事裁判教官だった裁判官(※)が言っていたことです。

しかし,やはり単なる文書だけでは決着できないことも多く,証人尋問によって決着がつくことも,当然少なくありません。

 

そこで,証人尋問を担当する弁護士のスキルが,訴訟の勝ち負けを決めてしまうことが往々にしてあります。

ここで,裁判を,特に証人尋問を何度か傍聴された方であれば,証人尋問のやり方は弁護士によって千差万別であることに気がついた方がおられるかと思います。

では,どのような尋問のやり方が「うまい」のか。これについても弁護士の中で色々な意見があります。

私も,証人尋問について書かれた書籍や他の弁護士の講義などを聞き,かつ日々証人尋問を行いながら研究しています。

その中で,おおまかに言うと次の点が大切なのではないかと思っています。

 

①証人尋問は,自分の意見を述べたり,証人の意見を聞く場所ではない。

→時々,証人と議論をしてねじ伏せようとする弁護士を見かけますが,大切なのはお互いの「意見」ではなく,証人の体験した事実や認識です。

 テレビドラマなどでは長々と自分の「意見」を述べる弁護士がいますが,実際の法廷とは随分異なった印象を受けます。

②証人尋問は,証人に自分が話して欲しい事実のみを話してもらえるのが,一番の理想である。

→証人にはこちら側の欲しい事実のみを述べさせるよう,コントロールしながら尋問することを心がけています。

 自分側の証人に対する尋問(「主尋問」と言います)であれば十分打ち合わせをすることが大切です。

 では,相手側の証人に対する尋問(「反対尋問」と言います)の場合,その証人をどのようにコントロールするか。

 このあたりから,それぞれの弁護士ごとのスキルが異なってくると思います。

③証人尋問は,不測の事態が発生することが多く,事前準備が大切である。

→やはり,人間が人間に質問するのですから,どのような答えが返ってくるかは,やってみないとわからない部分が必ずあります。

 その時にモノを言うのは,やはり事前準備。これをしっかりやっておけば,妙な答えが帰ってきても,対応できる幅が大きくなります。

 

上に挙げたのはあくまで総論的で,具体的な尋問に際しては,質問内容・順序・全体の構成などについて,それこそ寝ずに考え,作り上げることもあります。

 

もちろん,今まで全ての証人尋問で成功したわけではありませんし,振り返って「あれは失敗だった」と思うものもあります。

しかし,証人尋問についての方法論(単に「気合い」などといった意味ではなく)を意識し始めてからは,その違いは明白になりました。

 

少し大げさに言えば,弁護士にとっての証人尋問は,訴訟を勝利に導くという「戦略」の上で,決戦場での「戦術」が要求される場であると考えています。

一発勝負であることもあって,非常にエキサイティングな場面であるのみならず,そこには明らかに戦術「論」が存在します。

 

胸のすくような証人尋問ができた時は,何日か経ってからも思い出し,悦に入っていることもあります。

お客様の苦境を突破するスキルを,日々磨いていきたいと思います。

 

※一般に,裁判官にとっての司法研修所教官は「出世コース」であると言われ,優秀な方が多いです。

(2008/12/19)

この事件,勝てますか? 

事件を受任するときに,しばしば,

「勝てますか?」

「(相手からお金を)とれますか?」

と質問を受けることがあります。これは難しい事件・微妙な事件であればあるほど多いように思います。

お客様としては,せっかくお金を支払って依頼する以上,成功することを約束してほしいとお考えなのは当然です。

私としても,ここで力強く,

「大丈夫です!任せておいて下さい!」

と宣言したいのはやまやまです。

しかし,現実はなかなかそのようにはいきません。

どんなに容易に解決できそうに見える事件でも,一旦ふたを開けてみるまでは何があるかわからないからです。

お客様自身にも想像できなかった事実や証拠の出現,相手方の行動などによって事件の進行は異なってきます。

たとえ過去に発生したできごとであっても,これからの誰かの言動によって,当初の方針の変更を余儀なくされる場合も少なくありません。

そして,一番大きいのは訴訟になった場合です。

裁判官も神様でない以上,法廷内に持ち込まれた証拠にたよって判断をする以上,真実とは全く異なる事実を認定してしまう可能性があります。

もちろん,証拠を用いて事実を構築し,お客様の主張を裁判所にアピールすることは,弁護士の腕の見せどころです。

しかし,手段を尽くしたとしても既にある証拠の重みの前に破れたり,相手との駆け引きやふとした証言によって勝敗の帰趨が左右されたりすることも少なくありません。

やはり訴訟も人間同士で行う以上,絶対はありえないのです。

このように,弁護士はいわば「成功を請け負う」ことはできません。

そこで,弁護士が見とおしを語るときには,どうしても,

「お話を聞いた限りでは,勝てると思う」

だとか,

「まるきり期待ができないわけでもない」

などといった,奥歯に物が挟まったような説明しかできなくなってしまいます。

(弁護士に限らず)他の方から安易な結論,特に楽観論を聞いて来られた場合,説明を聞いて不満を感じる方もおられるかと思います。

しかし,このようなある種「煮え切らない」説明をしているからといって,やる気がないわけではありません。

むしろ,難しい事件・微妙な事件であればあるほど,どうすればお客様の期待に添えるか,解決に迫れるかを,「煮え切らない」説明をしている最中も,考え続けています。

私は,単に臆病であることと,人間世界の不可知性に対して謙虚であることは異なると思っています。

弁護士は,言葉に責任を持つ類の職業である以上,いい加減な事を申し上げてお客様に過度に楽観的な期待を持たせるわけにはいきません。

仮に安易に楽観論をふりまいて悪い結果が出た場合,それを当てにしていたお客様に二次被害を与えることになりかねません。

争いである以上,どうしても不確定要素が残ってしまいます。

大切なのは,その上で,その不確定要素とは何であるか,ご自身がどういう尺度(基準)で具体的進行方針を選んだのかを,しっかりご確認いただくことだと思います。

そのことが,(本当は考えたくもないですが)争いに利あらずして敗れた場合でも,お客様ご自身のリスクを最小限化し,あるいは心持ちをしっかりしていただく事につながるのだと思います。

。。こう書いていくると,

「この弁護士は負けたときのことばかり考えているのでは」

というご印象を持たれるかもしれません。

しかし,私としては,勝利にどん欲であればあるほど,上に書いたことは大切だと思っています。

そして,少し大仰な言い方をすれば「人事を尽くして天命を待つ」。

事実を丹念に拾って構築し,立証を重ねるという王道を実直に歩んでいくことこそが,お客様の期待する結果を導く,最も近道であると考えています。

そのことと,お客様のお気持ちとがしっかり合わさったときには,一番良い結果(「勝てた」)が出るでしょう。

お客様の人生の大切なときにおける,よき水先案内人でありたいと願っています。

(2008/12/06)

時間が空いてしまいましたが。。。

久しぶりの書き込みです。

 

このほど,高校時代からの友人でもあり,同じ事務所の同僚でもあった友人の,アメリカでの司法試験合格の知らせが届きました。

彼は,昨年の夏に,アメリカに渡ってロースクールに入り,今年司法試験を受けていたのですが,予想どおりとは言え,無事に合格できたことは,本当に素晴らしいことだと思っています。

単に留学,と言うだけでなく,語学と法律の壁をたった一年で突破したということに,よくぞ!という思いが正直にします。

ぜひ,これ以降も,培った語学と法律の知識(日本に帰ってからは国際法分野ということになるのでしょう)を武器にして,国際弁護士として縦横に活躍してほしいものです。

 

ところで私は,と言えば,彼のようなレベルまではともかく,何か一つでも外国語を使えるようになれたら。。と思いつつ,果たせないでいます。

恥ずかしい話,何年か前にイタリアに旅行した際,お店でイタリア人と英語で話をしていて,

 

「Can You Speak English?」

 

と馬鹿にされたことがあります。もちろんそのイタリア人は一切日本語を知らず,私はその会話で英語しか使っていなかった(はず)なのに,です。。

 

ある友達が以前,

 

「やる気のあるヤツは手段を考え,やる気のないヤツは言い訳を考える」

 

と言っていたことを思い出しましたが,今更ながら心に刺さりますね。。(苦笑)

 

ともあれ,彼の一層の活躍を願いつつ,私も自身の活動を,地道に取り組んでいきたいと思います。

(2008/11/29)

「これって請求できるんですか?」 -法律相談TV番組の功罪-

ひと頃よりは収まった感がありますが,TVでの法律相談番組に人気があるといいます。

弁護士がたくさん出て来て,事例が紹介され,

「○○は△△に請求できる(できない)!」

などといったYES・NO型の答えが提示される,というスタイルが一般的でしょうか。

こういった番組は,とっつきにくいイメージのある法律の問題を身近に親しみやすく感じることができるので,良い側面があることは間違いないでしょう。

しかし,TV番組は「わかりやすさ」や「おもしろさ」を大事にするため,物事を単純化しすぎて,実際の争いごとからかけ離れた描き方になってしまう傾向があるように思います。

こういった番組の影響でしょうか,法律相談を受けていると,

「これって相手に請求できるんですか?」

というご質問を受けることがよくあります。

このようにご質問いただく場合,お客様としては,現実に権利が実現する(例えばお金が手元に入る)ことをイメージして質問しておられることがほとんどです。

その場合,このご質問には,以下の3つの点を検討した上で回答さしあげる必要があります。

 

相手方の態度はどうか,

②訴訟で争った場合,裁判所の判断はどうなると予想されるか,

③①又は②をクリアしたとして,実現可能か,

 

という視点です。

つまり,一般的に相手に対して権利があるかどうかも大事ですが,現実の解決のためには実現するかどうかの視点がとても大事だと思います。

以下,順番に説明したいと思います。

 

①相手方の態度はどうか

お客様の相手方が,お客様の求めることを自分で認めている場合には,実現する可能性は高いと言えます。

この場合,その要求が法律上認められるかどうかは関係ありません(もちろん,要求自体が違法である場合は別ですが)。

相手が認めているのだから,あとは実行してもらうだけ,ということになります。

ただ,その要求が法律上必ずしも認められない場合もあります(例えば過大な慰謝料など)。

その場合,相手方が途中で気が変わってしまうと話がふり出しに戻ってしまうので,できれば文書の形にして,相手方から署名と捺印をもらっておくと良いでしょう。

どのような文書にすればいいかについては,あらかじめ弁護士にご相談されることをお勧めします。

文書の内容に問題があると,後に相手方の気が変わって争いになるなどした際,裁判所から認めてもらえないおそれがあるからです。

→これについては,また別の機会に説明する予定です。

 

②裁判所の判断はどうなるか

相手方が,お客様の要求を拒絶した場合,それがどんなに不当な拒絶であっても,無理矢理取りたてるというわけにはいきません。

そんなことをすれば,場合によっては,恐喝罪や強要罪などに問われてしまいかねません。

そこで,強制的にでも権利を行使できるよう,訴訟を起こして裁判所に判断を求める必要があります。

その場合,裁判所は,法律や過去に出された裁判例(「判例(はんれい)」と言う場合もあります)に基づいて判断をします。

従って,弁護士としては,ご相談を伺い,お客様の直面している具体的な状況を整理し,法律や裁判例に当てはめて予想を立てることになります。

 

③実現可能かどうか

①や②をクリアした後,最後のハードルがこれです。

たとえ権利があっても,相手にお金がない場合や逃げられてしまった場合には,せっかく訴訟で勝っても,単なる紙切れにすぎません。

そこで,仮に勝利した場合(相手がこちらの要求に応じる場合)に,こちらの要求が実現するかどうかについても,十分な検討が必要です。

もちろん,単純に正面から交渉したり争ったりするだけでは,権利を実現するためには不十分な場合があります。

そういう場合には,債権の回収行為(差押えなど)を行う必要がある場合があります。

また,債権の保全(仮差押えなど)を含め,あらかじめ権利実現に向けての下準備を行う場合もあります。

 

いずれにせよ,「請求できる」という言葉には,上で説明したとおり色々な角度から検討する必要があり,なかなかTV番組のようにはいかないのが現実です。

従って,その問題がお客様にとって大切であればあるほど,一度お気軽に(できれば早い段階で),弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

(2008/10/24)

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