弁護士 古川拓からのメッセージ
証人尋問の妙
テレビの裁判もので,証人尋問のシーンはクライマックスの一つです。
そこで,実際の裁判における,証人尋問について取り上げてみようと思います。
まず,誤解を恐れずに言うと,裁判の行方は,およそ7~8割が証人尋問前に提出された証拠(主に文書)によって方向付けられるといいます。
→これは,司法修習(研修のことです)時代,司法研修所の民事裁判教官だった裁判官(※)が言っていたことです。
しかし,やはり単なる文書だけでは決着できないことも多く,証人尋問によって決着がつくことも,当然少なくありません。
そこで,証人尋問を担当する弁護士のスキルが,訴訟の勝ち負けを決めてしまうことが往々にしてあります。
ここで,裁判を,特に証人尋問を何度か傍聴された方であれば,証人尋問のやり方は弁護士によって千差万別であることに気がついた方がおられるかと思います。
では,どのような尋問のやり方が「うまい」のか。これについても弁護士の中で色々な意見があります。
私も,証人尋問について書かれた書籍や他の弁護士の講義などを聞き,かつ日々証人尋問を行いながら研究しています。
その中で,おおまかに言うと次の点が大切なのではないかと思っています。
①証人尋問は,自分の意見を述べたり,証人の意見を聞く場所ではない。
→時々,証人と議論をしてねじ伏せようとする弁護士を見かけますが,大切なのはお互いの「意見」ではなく,証人の体験した事実や認識です。
テレビドラマなどでは長々と自分の「意見」を述べる弁護士がいますが,実際の法廷とは随分異なった印象を受けます。
②証人尋問は,証人に自分が話して欲しい事実のみを話してもらえるのが,一番の理想である。
→証人にはこちら側の欲しい事実のみを述べさせるよう,コントロールしながら尋問することを心がけています。
自分側の証人に対する尋問(「主尋問」と言います)であれば十分打ち合わせをすることが大切です。
では,相手側の証人に対する尋問(「反対尋問」と言います)の場合,その証人をどのようにコントロールするか。
このあたりから,それぞれの弁護士ごとのスキルが異なってくると思います。
③証人尋問は,不測の事態が発生することが多く,事前準備が大切である。
→やはり,人間が人間に質問するのですから,どのような答えが返ってくるかは,やってみないとわからない部分が必ずあります。
その時にモノを言うのは,やはり事前準備。これをしっかりやっておけば,妙な答えが帰ってきても,対応できる幅が大きくなります。
上に挙げたのはあくまで総論的で,具体的な尋問に際しては,質問内容・順序・全体の構成などについて,それこそ寝ずに考え,作り上げることもあります。
もちろん,今まで全ての証人尋問で成功したわけではありませんし,振り返って「あれは失敗だった」と思うものもあります。
しかし,証人尋問についての方法論(単に「気合い」などといった意味ではなく)を意識し始めてからは,その違いは明白になりました。
少し大げさに言えば,弁護士にとっての証人尋問は,訴訟を勝利に導くという「戦略」の上で,決戦場での「戦術」が要求される場であると考えています。
一発勝負であることもあって,非常にエキサイティングな場面であるのみならず,そこには明らかに戦術「論」が存在します。
胸のすくような証人尋問ができた時は,何日か経ってからも思い出し,悦に入っていることもあります。
お客様の苦境を突破するスキルを,日々磨いていきたいと思います。
※一般に,裁判官にとっての司法研修所教官は「出世コース」であると言われ,優秀な方が多いです。
(2008/12/19)

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