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弁護士 古川拓からのメッセージ

「これって請求できるんですか?」 -法律相談TV番組の功罪-

ひと頃よりは収まった感がありますが,TVでの法律相談番組に人気があるといいます。

弁護士がたくさん出て来て,事例が紹介され,

「○○は△△に請求できる(できない)!」

などといったYES・NO型の答えが提示される,というスタイルが一般的でしょうか。

こういった番組は,とっつきにくいイメージのある法律の問題を身近に親しみやすく感じることができるので,良い側面があることは間違いないでしょう。

しかし,TV番組は「わかりやすさ」や「おもしろさ」を大事にするため,物事を単純化しすぎて,実際の争いごとからかけ離れた描き方になってしまう傾向があるように思います。

こういった番組の影響でしょうか,法律相談を受けていると,

「これって相手に請求できるんですか?」

というご質問を受けることがよくあります。

このようにご質問いただく場合,お客様としては,現実に権利が実現する(例えばお金が手元に入る)ことをイメージして質問しておられることがほとんどです。

その場合,このご質問には,以下の3つの点を検討した上で回答さしあげる必要があります。

 

相手方の態度はどうか,

②訴訟で争った場合,裁判所の判断はどうなると予想されるか,

③①又は②をクリアしたとして,実現可能か,

 

という視点です。

つまり,一般的に相手に対して権利があるかどうかも大事ですが,現実の解決のためには実現するかどうかの視点がとても大事だと思います。

以下,順番に説明したいと思います。

 

①相手方の態度はどうか

お客様の相手方が,お客様の求めることを自分で認めている場合には,実現する可能性は高いと言えます。

この場合,その要求が法律上認められるかどうかは関係ありません(もちろん,要求自体が違法である場合は別ですが)。

相手が認めているのだから,あとは実行してもらうだけ,ということになります。

ただ,その要求が法律上必ずしも認められない場合もあります(例えば過大な慰謝料など)。

その場合,相手方が途中で気が変わってしまうと話がふり出しに戻ってしまうので,できれば文書の形にして,相手方から署名と捺印をもらっておくと良いでしょう。

どのような文書にすればいいかについては,あらかじめ弁護士にご相談されることをお勧めします。

文書の内容に問題があると,後に相手方の気が変わって争いになるなどした際,裁判所から認めてもらえないおそれがあるからです。

→これについては,また別の機会に説明する予定です。

 

②裁判所の判断はどうなるか

相手方が,お客様の要求を拒絶した場合,それがどんなに不当な拒絶であっても,無理矢理取りたてるというわけにはいきません。

そんなことをすれば,場合によっては,恐喝罪や強要罪などに問われてしまいかねません。

そこで,強制的にでも権利を行使できるよう,訴訟を起こして裁判所に判断を求める必要があります。

その場合,裁判所は,法律や過去に出された裁判例(「判例(はんれい)」と言う場合もあります)に基づいて判断をします。

従って,弁護士としては,ご相談を伺い,お客様の直面している具体的な状況を整理し,法律や裁判例に当てはめて予想を立てることになります。

 

③実現可能かどうか

①や②をクリアした後,最後のハードルがこれです。

たとえ権利があっても,相手にお金がない場合や逃げられてしまった場合には,せっかく訴訟で勝っても,単なる紙切れにすぎません。

そこで,仮に勝利した場合(相手がこちらの要求に応じる場合)に,こちらの要求が実現するかどうかについても,十分な検討が必要です。

もちろん,単純に正面から交渉したり争ったりするだけでは,権利を実現するためには不十分な場合があります。

そういう場合には,債権の回収行為(差押えなど)を行う必要がある場合があります。

また,債権の保全(仮差押えなど)を含め,あらかじめ権利実現に向けての下準備を行う場合もあります。

 

いずれにせよ,「請求できる」という言葉には,上で説明したとおり色々な角度から検討する必要があり,なかなかTV番組のようにはいかないのが現実です。

従って,その問題がお客様にとって大切であればあるほど,一度お気軽に(できれば早い段階で),弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

(2008/10/24)

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