弁護士 古川拓からのメッセージ
「カンテツ」な女?
最近,NHKが「カンテツな女」という番組をやっています(番組紹介は以下のリンクをご参照ください)。
http://www.nhk.or.jp/kantetsu/index.html
この番組の中では,まさに「カンテツ(完徹=朝まで一睡もしない)」をして働く女性たちが描かれています。
不況と閉塞感が漂う中で,「がんばっている女性を生き生きと描く」という番組制作者の気持ちがあるのだと思います。
確かに,バンクーバーオリンピックで一所懸命な選手のように注目を浴びなくても,世の中でがんばっている人たちに脚光を充てること自体は悪くないと思います。
しかし,そこに,負の側面や危険があることもまた,しっかりと位置づけてほしいと思います。
労災事件,特に過労死(脳・心臓疾患)事案を担当していると,カンテツすることによる脳・心臓への負担は相当なものになることが分かっています。
例えば,会社でトラブル発生(顧客への納品ミス)で1昼夜ぶっ続けで対応に追われ,その結果脳や心臓疾患を発症して亡くなられた,などということが起きれば,労災認定される可能性はかなり高いものと思われます。
一所懸命がんばること自体を否定はしません。時にはやむを得ない場合がありうることも理解できます。
しかし,負の部分を取り上げずに手放しで礼賛するのはいかがかと思います。
上に書いたNHKのページでは,「カンテツな女」募集!,となんだか面白半分です。
しかし,過労死や過労自殺の事件を扱っていて感じるのは,現実はそんなに美しくなく,その中で身を削る思いをして悩み,必死で対応し,そして倒れていった方たちがいます。
そういう意味では,こういった軽いタッチというのはいかがなものかと思います。
朝日新聞が,この番組に対する以下の記事を取り上げていますが,過労死弁護団に所属する私としても,家族の会と同じ思いでいます。
最後に一言,NHK担当者が「法令などを考慮しながら番組制作を進めており、内容に問題はないと考えています」と述べたとされますが,一体どういう法令を考慮したというんでしょうかね。。
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NHK「カンテツな女」改善を 過労死遺族が抗議
http://www.asahi.com/national/update/0227/OSK201002260207.html
徹夜で働く女性の姿を追うNHKのドキュメンタリー番組「カンテツな女」について、過労死遺族らでつくる「全国過労死を考える家族の会」(東京)などが、長時間の深夜労働を礼賛するような内容だとしてNHKに改善を求める申入書を23日付で送った。
番組では、美容師やトラック運転手ら夜を徹して働く女性の仕事ぶりや生き方を紹介。1月20日から毎週水曜の午前0時10分から放映され、来月3日が最終回の予定。
今月17日の放送分では、30代の居酒屋チェーン店長が1日17時間近く働き、週平均5日の徹夜勤務をこなしているとされ、本人の「今はすごい幸せです」という言葉も伝えられた。申入書は「力強い生き方には感動するが、常軌を逸した長時間の働き方に無批判な番組づくりは疑問」として、過労死の危険性も踏まえた番組制作を求めている。
連名で申し入れた過労死弁護団全国連絡会議(東京)の代表幹事を務める松丸正弁護士(大阪)は「連日の徹夜勤務が過労死や過労自殺を招くことはこれまでの裁判でも明らか。心身の限界まで働くことを美談とするべきではない」と話す。
NHK広報局は「法令などを考慮しながら番組制作を進めており、内容に問題はないと考えています。様々なご意見に謙虚に耳を傾け、番組づくりを進めていきます」との談話を出した。(阪本輝昭)
(2010/02/27)